物件売り主様へのインタビュー_02(多可町加美区)

物件概要
多可町加美区
築年数不明
木造瓦葺2階建て+木造瓦葺平家建+附属建物(農業倉庫・農機具倉庫)
敷地面積:844.67㎡・延床面積:99.17㎡

棚田が美しい集落で、物件から見渡すことができる景色は最高です。先祖代々引き継がれてきた古民家を大切に守り続けてきましたが、この度、新たに家を大切にして住んでくださる方が見つかったので、次の世代に託されることになりました。

紡:今回、つむぎ不動産が仲介させていただいて新たに住んでくださる方が決まった物件ですが、これまでの経緯や家の歴史などをお聞かせいただけますか。

所有者旦那様:私は兵庫県の加古川で生まれ、小学2年生までそこにいました。そして父の転勤でこの地に帰ってきて小学6年生までいましたが、中学生から外に出たので、正味6年ぐらいしか住んでいないんです。
祖父母の代までは農業と林業をやっていました。この村におられる皆さんはほとんどそうだったんじゃないでしょうか。
父は兵庫県の教育者でしたのであちこち転勤がありましたが、定年退職してからは農業と林業もやっていました。なので、父の代から少し働き方が変わった感じでしたね。

紡:あの家に関する思い出やエピソードなどがあれば教えてください。

旦那様:子どもの頃は、とにかく周りが石垣だらけでしたので、そこから飛び降りたり、田んぼの中で三角ベースボールやったりして遊んでいました。敷地がどこも狭いので、ボールが棚田から落ちるたびに拾いに行かないといけないので大変でしたよ。
その他、鍛冶屋の金比羅山のときに出店で買ってきた竹ひごに紙を貼って作ったプロペラの飛行機を棚田の上から飛ばしたりして、子どもたちなりに工夫して遊んでいましたね。
私が加古川から松井小学校に転校してきたときには、クラス全員の男子が丸刈りで私一人だけが長髪でした。自宅から学校まで4kmほど歩くのですが、当時は1mほど雪が積もることもあって、自分たちで除雪をしながら通っていましたね。
下校途中にはそこらへんになっている栗や柿を採って食べたり、喉が渇いたら他所の家に上がって水を飲ませてもらったりしていました。大変でしたけど、今思うといろんな思い出があります。

奥様:こっちの小学生は、横断歩道を渡ろうとしているときに車を停車してあげると、渡り終わった後にみんながドライバーに向かってお辞儀をしてくれるんですが、素朴で良い地域だなと思いました。都会だと当たり前にそのまま渡って行ってしまうんですけどね。

紡:あの家は何年ぐらい空き家になっていたんですか。

旦那様:父が亡くなってからなので、10年ぐらいです。私は長男ですので、それからは定期的に風通しをしに帰り、草引きをしてご近所さんに迷惑をかけないように家のお守りをしていましたが、真夏などは大変でいろいろ迷惑おかけしました。雑草って本当に伸びるのが早いですから。

奥様:新しい方に来ていただくことになって、これで草引きをしなくても良いのかと思うと気が楽ですけど、ちょっと寂しい気持ちもありますね。
私は、結婚するまではまったく知らない場所でした。棚田の景色を見て美しい場所だとは思いましたけど、カルチャーショックな一面もありました。

紡:多可町も他の自治体同様に人口が減っていますが、このまちがこういう姿で残って欲しいなということや、懸念されるようなことはありますか。

旦那様:自分では何もできなかったんですが、やはりこの地域の自然の風景は残して欲しいなと願っています。私の祖父の代までは牛を使って耕作していましたし、ヤギやヒツジもいました。山間部の少ない土地で、工夫をしながら田畑を維持してきたんでしょうね。

奥様:そのためには、移住してくださる方がもっと増えてくれるとまちが元気になるんじゃないかなと思います。今回、紡さんのおかけで若いご夫妻にご縁があってあの家に住んでくださることになりましたけど、こうした人たちが増えてくれると私たちもとても嬉しいです。

旦那様:我が家は子どもがいませんけど、もしいたとしても正直言ってあの家を遺されても子どもたちが嬉しいと思うかどうか…。なので、今回、家を気に入ってくださった方がいたのはありがたいことでした。やはり、先祖代々苦労をして守ってきた家ですので。

奥様:紡さんがボランティアではなくて一般社団法人にされたのは何故なんですか?

紡:元々は町内の古民家好きの個人が集まって、古民家でワイワイ楽しく改修作業を楽しんでいる任意団体だったんですが、そういった場所に集まってくださる方って、「いつかは自然豊かな地域で暮らしたいな」と思っておられる潜在的な移住希望者なんですよね。そして町内には人が住まなくなった空き家がたくさんあって困っている方々もたくさんおられるので、そういう人たちのニーズを満たすために空き家を取り扱うことができる宅建業を始めることになりました。
さらに、それらに付帯する農地や山林などの課題もありました。山林は理事の一人である工務店で独自に製材をするような仕組みを作ったので活用方法の道筋がついていたのですが、あとは農地をどう活用するかという課題が残っていますね。
こうした活動を続けていくためには皆様から安心して任せていただく仕組みが必要でしたので、法人格を取って事業を行うことになったんです。古民家から始まって、いろんな課題に向き合ってきたら今の状態に自然になっていた感じです。
古民家って一度潰してしまうと二度と同じものを建てることができないですし、多可町の風景や歴史の一部でもありますので、できればこのまちの財産でもある古民家を大切に使って住み続けてくれる人たちが来てくれたら良いなと思って活動しているので、普通の宅建業者とはちょっと違うかもしれませんね。

奥様:最初にお話を聞いてもらった山本さんと太田さんがとても誠実に対応してくださったのでお願いをすることにしたんですが、最初は古民家改修などをしているボランティア団体と不動産屋というのがどういうつながりなのかな…と思っていました。でも、今の話をお聞きして理解できました。

旦那様:確かにあの風景の中に新しい家が建つと、全然違った風景になってしまいますよね。この村は、できるだけ風景に馴染む家を大切にするという方針があるみたいですね。

紡:紡の事務所は民泊や居酒屋としても活用していて、「古民家でこういったビジネスができますよ」という目に見える形でのモデルをやっているという部分もありますので、越して来てくださった方に家を売ってそれで終わりではなくて、この地域でどうやって楽しく暮らしていただくのかという部分も含めて一緒に考えることができたら良いなと思っています。

奥様:自分たちの代であの家を売るのは断腸の思いではありましたけど、こうして潰さずに活用してくださる方に巡り会えて、これでご先祖様に少し言い訳が立つという安堵感はありました。新しい住人の方からも、「きれいにリノベーションしたら是非来てください!」って招待されているので、今から楽しみにしているんです。
主人が現役のときははまだ良かったんですけど、家のお守りは労力だけでなくて金銭的な負担も大きい二重生活ですので、本当に大変でした。

紡:次に来てくださるのは若いご夫婦ですので、村の雰囲気もかなり変わるんじゃないでしょうか。

奥様:そうですね。もしお子さんができたら、赤ちゃんの泣き声や笑い声が山に響くようになるでしょうね。これまで多可町を知らなかった人たちも遊びに来るようになるでしょうし。

旦那様:昔は田んぼの石垣にホタルがたくさん止まっていて、網を持っていくといくらでも捕れるぐらいいたんですよ。夜に窓を開け放しておくと家の中にホタルが入ってきていましたし、家の中に吊っていた蚊帳にもたくさん止まっていましたよ。今思うと贅沢な話なんですけどね。

奥様:地方を旅行していると気がつくんですけど、人の手が入っていない土地が年々増え、草が伸び放題になっている地域などもたくさんあります。それに比べると多可町はまだ住民の皆さんが協力をして地域を守っておられるということを感じることができる場所で、良いところだなと思うようになりましたね。なので、これまでは家のお守りのためだけに多可町に帰り心の余裕がなかったのですが、これからは多可町の良いところを見つけにときどき足を運びたいなと思っています。